さよなら、だけが、アレだって、話だぜ。
或る青年は酷く戸惑っていた。
自分の足で踏み締める土地の感覚が、
軽薄すぎることに酷く戸惑っていた。
或る青年は酷く困っていた。
大好きだった連ねられた文章を読み、
様々な嗜好に応じる事に罪悪感を、
いつだって感じる思考に酷く困っていた。
或る青年は酷く煩わしかった。
呑み屋で出会った連れに言われた、
自分の髪の色や服装の着目や文句が、
そいつの感情でしかなく、それに対し、
俺の感情も湧き上がらない事に、うんざりし、
そこで産まれる他や己への評価が、
酷く煩わしかった。理由もありき。
或る青年は荒れ果てた。
殴っても殴っても血の出ない心身を、
態とらしく棒に振って何気無い素ぶりすらも、
誠の己は誠の俺への忠誠心に逆らい、
感傷的にも干渉的にもなれぬ己に苛つき、
傷つき、悩み果てなく、旅路が続いてく運命に、
トドメを探すタイミングを見計らい、
青年は荒れ果てた。
青年の家の模様が変わった。
テレビのインチ数が上がり、
何故だか高級取りのような家になり、
生きてる事にすら後ろめたさが消えないのに、
青年の家は模様が変わっていく。
季節が変われば、服装も変わり、
その変化にすら愛おしさを覚えてた青年は、
もう何処にも居ない。
何かを表記や手記するにも、
H29.7.21と記してしまう。
そこから青年のタイマーは動いていない。
理由はわからない。記憶力も犇と失われ、
隣に誰もいない1人すら愛せず、
そんな奴は誰をも愛せる力は持っておらず、
青年は酷く傷ついていた。
傷に感け、何処かの狭間に納まろうとし、
兎に角、逃げる場所を探し、走らんとしていた。
自堕落。という言葉一つが、
青年を崩壊させていった。
初めてではない。
大宰の描く葉太郎に出会った時も、
町田の描く熊太郎に出会った時と、
何ら変わらなく、自堕落な自身は、
元から自堕落であり、今更、何を。
と思う日々が増え、飲酒も増え、
その反動で拡がる、己への嫌悪は、
意に反する事なく、比例する。
然し、それが人生で、
ノックダウン寸前のボクサー、
カウント9で諦めを決した時、
勝手なレフェリーが、無理矢理、
青年の身を起こしては、
また殴り続けられたら、
または逆も然りで、
死ぬ程、愛されていた筈の青年は、
きっと、そうでなくて、
情けなかったのろうか、
人の目に触れるレベルで、
抑える力のない人間だったよ、青年。
生きたいのか?死にたいのか?
垂れ下がった首吊りロープを見て、
一先ず安堵して死を超えて、
生きるのみとなっております。
会えるのなら今だ。
未だ蜃気楼の中、私、
触れたいものに触れる勇気が有りませぬ。
お許しください。神様。
最近、神様も馬鹿にできないな。とまで
行き着いた、或る青年は、
酷く脆く、酷く無様で、程度の軽い融和を、
臨んでいるのです。
嗚呼、なんて浅ましい。
誰か、彼を如何にか殺めてやってくれ。
優しさを、母性を、言葉を、寝息を、じゃれ合いを、寝言を、青年の眠りも、貴方の眠りをも、
与えてくださるか、逆に振るか。
死ぬように眠れ、其処の青年。
有無を言わず気を失いたまえ、
さあ、遠慮はなさらずに。
おやすみ世界。さよなら、或る青年。
朝には悔いなきように死んでおけよ。